いつかの星読み 


その昔、東の街と西の街の間にたつアヴァロン大聖堂には凶悪が巣くっていた。凶悪は日の沈む西の街へむかって災厄をふりまいていた。人々はその災厄が治まるようにと、ある魔術師の子供を贄として凶悪に捧げた。その子供は西の街で異端児だった。凶悪はその子供がただの人間ではないことがすぐにわかった。こいつは計り知れない膨大な魔力を秘めている。そしてそそのかした。見逃すかわりに契約しろ、さすれば己が黒の力をすべて授けると。


悪なるものにとって魔力は養分。契約者がその属性の魔術で消費した分だけ養分として吸える。 術者にとって契約するメリットは、契約することで正なるもの、または悪なるものから力を得られるので、普通の人間が使える魔術の範囲を超えられること。その力は契約相手の強さや階級に比例するが、力を欲する者は正なるもの、悪なるものと契約し、そうして常人では到底手に入れることのできない力を手に入れた。その代償として身を滅ぼす道を辿ったものがほとんどであったが。


自身の命を前にして善悪の判断はなく、助かるならと契約した。凶悪は高笑いをあげたのち、子供に禁術書をあされと言い残し、アヴァロン大聖堂から消えた。西の街から災厄は消えた。子供は災厄を退治した光の子として祀られた。そして、もともと異端児とされていた原因の未来予知が本物であると認められた。


いずれ子供は王のもとに召喚された。未来予知が本物なら国のため自身のために使おうと考えられたからだ。子供はたくさんの本を褒美として与えられるかわりに、毎晩星を読み未来予知をした。明日起こるであろう出来事、街のゆくすえ、訪ね人、天気までも、吉報から凶報までさまざまな予言をした。それはひどく心を削られるものだった。先を知るということは生きる上で退屈であり窮屈、また悲しく、むなしく、どうしようもない焦燥もあった。眠れぬ日々が続き、食事が喉を通らぬときも少なくなかった。


ある時、心と体を蝕まれてもなお未来予知を求められた子供を哀れに思った一人の若者が、子供を王から隔離した。その若者は次期の王になる者。王子は子供をあたたかく包んだ。食事の進まぬときはそっと飲み物を差し出した。眠れぬ夜は寄り添った。しかし子供の力に依存していた王は憤怒した。


ある日、王子は死んだ。暗殺だった。死に際に駆け寄る子供に、自分のために力を使い、自分のために生きなさい、と言った。


その晩、子供は泣きながら未来を見た。途方もない先の未来を。いつか再びこの世に降り立ち、王として君臨する。いつかの未来を。これからは自分のために生きると誓った子供は、ありったけの本をあさって、ついに禁術に触れた。自らに流れる時を止める、不死身の術。


時代が流れてゆくなかをたった一人、止まった時とともに未来へ歩んでいったのだ。



メルディン・リィ・マーリン(ΑsΩ)

花葬

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